現在の新型コロナウィルスの渦中では、「密閉・密集・密接」を表す「三蜜」という言葉が定着している。そんな中偶然に知ったのだが、仏教の真言宗を代表とする密教においてもこの「三蜜」という言葉は既に存在していて、「身蜜(正しい態度)・口蜜(言動の慎み)・意蜜(利他への想い)」を指しており、この3つの実践こそが「即身成仏(生きたまま仏になる)」に繋がる、という教えなのだそうだ。造語として発生した現代の「三蜜」は、社会における人との接触に警告を鳴らし、仏教用語のそれは、人としての在り方への警告だと捉えれば、特にこの時期だからこそ、「人間よ、今一度生き抜くための価値観を改めよ」と天からの声が降っているかのような気持ちにもなってくる。
疫病が時代の大変革をもたらす、という言い伝えもあるようだが、いずれにしても断捨離だけではなく、自身の物心両面における価値観を棚卸して、再考する期間なのかもしれない。
※本原稿は山陰中央新報紙の「こだま欄」に投稿・掲載された文章です。