音楽家の井上陽水氏のヒット作で、「探しものは何ですか、見つけにくいものですか」で始まる「夢の中へ」という曲がある。最近この曲が頭から離れない。未だ収束しない感染症がもたらす社会の閉塞感に耐え切れず、私の脳みそが安らぎを求めた結果、「夢の中へ」という言葉にすがり始めたのかも知れない。ただ曲中に、「探すのを止めた時、見つかることもよくある話で」というくだりがあるため、この言葉に希望を託しているのかなと思えなくもない。
詩人である相田みつをさんの有名な作品で、「セトモノとセトモノとぶつかりっこすると すぐこわれちゃう どっちか やわらかければだいじょうぶ やわらかいこころを持ちましょう」という詩がある。正に今は、「安心」という探し物を求め過ぎるがゆえに、世知辛いセトモノ的な心がぶつかっている状態ではないのか。「探すこと」は続けるとしても、一旦五輪への夢を語れる余裕を共有しようではないか。
※本文は令和3年7月20日に、山陰中央新報紙の「こだま欄」にて掲載された文章です。
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